Poem

つれない風のいたずらに

つれづれ心は
伝わることなき
やんごとなし
つれない風のいたずらに
なすすべもなく
ものさびし

慣れた鼻緒の古めかし
思いのたけもやすらけく
浴衣のすその愛おしき
線香花火の静穏に聴き惚れて
一炊の夢に
波紋ありて
心打つ

風鈴を
揺らすはたれぞ
見るも
見らずも
気配あり
まどい忘れて
わが心の契りにして
目の奥の
その奥の
それを見るなむ


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夜の訪問者

月の光に照らされて
白く小さな生き物が
路地をすり抜けやってきて
夜露に濡れた
草花の
足元揺らし愛らしい

彼らの肢体しなやかで
なんともなしにほだされて
踊りのダンスに
つい見とれ
わたしも
ついには踊りだす

二度目の夜も
期待はせずして待っていた
やはり二匹がやってきて
小さな体で踊りだし
わたしの足元じゃれついた

息をひそめて立っている
わたしの刻みもおぼろげで
影の動きもはかなくて

まんまるお月様
見つめると
心なしか
濡れていて

わたしもいっしょに
なんとなく
恋しさまじりの
風もよう

夜のしじま
踊る指先
美しく

月の光に
届くまで


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痩せた猫

ファドの音のするところには痩せた猫がいる
見事にスリムでしなやかで
優雅は彼女の代名詞

痩せて優雅は不思議な表現
誰もがひもじいだろうと
そう思う

それはほとんど間違いで
安香水と煙草のけむりの流れに逆らって
テーブルの下の女のヒールをうまく避け
バランスとって歩いてみせる

December
人たちは賑やかにしないと間が持てず
女はころころ笑い男はそれを受け
うなずくふりをする
まるで誰しもそうあるべきだと
いうかのごとく

――猫が自由きままでいい――
などと
それは見る目がないからだ
ファドの音を嗅ぎつけるのは猫の特権
ポーカーフェイスの猫たちに
ペンを握らせることができるなら
みんなはきっと腰ぬかす
裏取引のテーブルも
悪巧みの会場も
下悠々と歩く彼女は
ただの猫
誰もが
「なんだ猫か!」とそう思う
迷宮入りさあねえ…

今宵はクリスマスイブ
だからどこもゴージャスね
何食わぬ顔でねぐらをさがすファドの猫

大切なのは今夜のねぐら
やわらかくてあたたかく
天使の場所にちゃっかりと
同情も嘆きもなしで
丸くなって横たわる

今宵小雪の舞い落ちる
丸くなって目をとじた
そぎ落とされた猫たちに
わたしも同じく
投げキッス!

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情念

ああ
もう今となっては遅いのだが
身もたえだえの
ただのそれだけを
ほんのちょっと
あじわうことができないものか

その狂おしい
ひざまずくほどの
情念の
凍る前の
ひとひらを

ああ
もう今となっては遅いのだが
思いという
ひとひらの
純粋な

おろかでも
ひたすらに
思う気持ちの
その狂乱を
思い出させてはくれまいか



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ベンチにて

乾いた木立は
太陽で
陽と陰をつけ
黄色い葉たちの
風に舞う

地面に
運ばれ
音のする

茂った森の
人々は
のどかで久しく
美しく


ベンチに座り
足を組み
まんじりともせず

おだやかな
昼下がり
亡霊たちの
饗宴の

孤独なる
胸中に
交じらず

静かにて
わかりたまえ

空臑の
凍るがごとし

末尾の
運命の
永遠ならんことを
運命論に
先がけて

我が胸の
なでおろす
時よ
独りより
より絶望の
その時を
知らず
生き通せることを

子供たちの声
聴こえて
聴こえず
ここに居て
ここにあらず

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